みなさま、大変ご無沙汰しております。なんと4年ぶりの投稿でございます。
毎年、年始にスキー合宿に来てくださるH県の高校の先生に「なんでblog更新しないんですか?」と迫られ、更には「更新してないと廃れて見える」との厳しくも愛あるご指摘をいただきました!
若女将、基本的に人に厳しく、自分に激甘な女なのですが、よし!2026年はそんな自分から脱却してやろうじゃないか!先生!ありがとうございます!若女将、blogにログインしましたよ!
さて!お久しぶりすぎて、もうなにから話したらいいのかわからない。 ドラマ『じゃあ、あんたが作ってみろよ』の放送以来、出会う人出会う人に「夏帆に似てますね」って言われまくった若女将が よっしゃそんなに似てるんなら鮎美と同じ髪型にしようじゃないの!とニヤニヤしながら美容院に行って、担当の人に「似合わんからやめとけ」って止められた話なんて、ここでしたってしょうがない。
ので、もうさっそく今日の本題お話しちゃう。それでは張り切ってどうぞ!
そう、あれは年が明けて間もない1月2日、吹雪の夜のことだった。
時間は午後9時頃。夕食が終わり、旅館にはゆっくりした時間が流れていた。その日、赤ちゃん連れのお客様もおられたので、風の音が怖くないかな?と少し気になるくらい外は吹雪だった。
今日の宿泊のお客様のチェックインはすべて済んでいる。だけど、玄関にひとり、全身雪まみれの見知らぬおじさんが立っていた。幻覚じゃないことを確かめ、声を掛けようとしたその瞬間、おじさんが叫んだ。
「하룻밤 재워줘!」
んえ・・・?なんて・・・?
急いで翻訳アプリを用意しておじさんに向ける。
【一晩、泊めてください。】
【山頂に泊まろう思ったけど無理だった。】
【11人で来たけど、あとのメンバーは山頂泊するって。】
【わしは無理。途中で引き返した。ここに泊めて。お願い。】
途切れないおじさんの言葉を、アプリは一生懸命翻訳してくれた。
登山口から雪花荘まで宿は何件かある、つまり断られてここに行きついた可能性が高い。そしてなにより寒そう。外に出ているありとあらゆる毛が凍っている。お風呂で温まって欲しい。素直にそう思った。
『オッケー!雪落として上がってきてください!朝ご飯付きで9,300円ね。いい?お部屋用意しますね!』
わたしも翻訳アプリで返事をした。おじさんは画面を見るとニッコニコして【晩ご飯もなんかある?お腹空いて死にそう。】と言ってきた。うどんでいいか?と聞いたら更にニッコニコで【先に風呂入ってくる♪】と。
あとの10名が心配だなと思いつつも、韓国の人って寒いの慣れてるし、登山もエキスパートが多いと聞いたことがある。おじさんがお風呂から上がったらうどんを用意しよう。お肉ものせてあげようか。そんなことを考えていたそのとき、玄関で何やら物音がしている。
急いで行ってみると、10名の凍ったおじさん、おばさんが玄関に立っていた。
「「「하룻밤 재워줘!」」」
多分おじさんと同じ言葉を叫んだ。一晩泊めて!って言ってる!絶対そう。その場にいた若旦那と会長と若女将でプチ会議が開かれた。
勝手なイメージだったが、このお国の方は声が大きい。まずはもう就寝されてるお客様がいるから、なるべく静かにしてもらうこと、赤ちゃんもいるから配慮してね、と伝えた。快く聞き入れてくれた。おや?いい人たちじゃないか。代表でおばさんが翻訳アプリを使って話してくれた。
【わたしたち全部で10人。一部屋で狭くてもいいから泊めてくれないか。そして、そのおじさんも仲間だ。】
気付いたらおじさん、お風呂から上がってホクホクでわたしの後ろに立っていた。若旦那が急いで部屋の準備に小走りした。さすがに10名は狭すぎるので二部屋用意することを伝えた。
【ありがとう、わたしたち凍え死ぬところだった。あなたは命の恩人。】
うん、とにかく雪を落として。あなたたちみんな雪だるまみたいだから。はやくお風呂に入って温まって。そう促していると、
【山頂泊するつもりでご飯の準備してるから、部屋で調理させてほしい。】
えええええええええええ!!!!!!!火気厳禁!!!!!!!!ダメダメ!
わたしはめっちゃ日本語で伝えてしまった。自分が静かにしろと言ったのに、驚きすぎて大きな声が出てしまった。でも伝わったんだろう。おばさんは話を続けた。
【じゃあご飯つけたらいくらになる?】
おじさんに提示した料金を教えた。後ろでおじさんもニコニコしながら翻訳アプリを覗いて頷いている。
すると、画面を見たおばさんたちの顔が急に曇り始めた。
「10명이 이 가격인가요?」
翻訳アプリに聞いてみると【10人でこの値段ってことだよね?】と。わたしはこの瞬間、あの人になると決めた。お互い只ならぬ空気だ。おわかりだろうか、おばさんたちは値切ろうと戦闘態勢に入ったのだ。後ろにはニコニコ&ホクホクのおじさんと、自分のスマホで一応翻訳アプリを開いているが、一言も喋る隙を与えてもらえない会長。わたしにはもうすでにあの人が憑依していた。
『違うよ、ひとりでこの値段だよ。』
【一部屋この値段にしてくれない?】
『ダメだよ、もうこの値段で納得して泊ってるお客さんがいるから。あなたたちだけ特別はできないよ。』
【じゃあ野宿しろってこと?野宿して凍え死んでもいいの?】
『そんなこと言ってない。料金をきちんと払って欲しいだけ。』
【だから高すぎるんだって!】
『検索してみて。どこも同じだよ。冬季は暖房費もかかるからこれでも安い方なんだよ。』
【普通、一部屋あたりの料金でしょ?】
『うちは一部屋あたりで売ってない。』
【ありえない、韓国で考えたら高すぎる!】
「あのさ、ここ日本だから!」
このとき、わたしは完全に山本舞香だった。完全に日本語だった。そしてわたしは負けなかった。おばさんは最後になにか言いたそうだったが、日本の女優、山本舞香を目の前に、戦意喪失したのであろう。しぶしぶバックパックを背負って、みんなを引き連れて出口へと向かって行く。ああ、でもどうしよう、わたしが山本舞香になったせいで、日韓関係が悪化してしまったら。するとおばさんが言った。
【悪かったね。邪魔したよ。】
わたしは山本舞香の顔つきで静かに頷いた。 後ろにはニコニコ&ホクホクのおじさんと、自分のスマホで一応翻訳アプリを開いているが、一言も喋る隙を与えてもらえない会長、そして、小走りで部屋の準備をしていた若旦那。若旦那がわたしを見て驚いていた。なぜここに山本舞香が…?
わたしはニコホクおじさんに聞いた。
『おじさんはどうするの?』
【わしは泊る♪】
こうしてわたしの山本舞香化は日韓関係にはなんの影響もなく、むしろガチンコでぶつかることで、人と人は言葉の壁を超えて分かり合えることを証明したのだった。
~完~

山本舞香さん、ありがとう。

Comment